いまやダンスジュテの名物レッスン「リズムマスター」。その最初のバージョンが生まれたのは、なんと25年前。当時は「ストリートダンスはストリートで学べ」なんて時代で、今のように“リズムトレーニング”というレッスン形式はほとんど見かけませんでした。
HIPHOPのレッスンはアンダーグラウンドな雰囲気が主流。ドレッドヘアに、超ワイドパンツ、XXXLのTシャツ──そんなファッションが日本でも流行していた頃です。私はその頃ジャズダンスを主にやっていましたが、HIPHOPの世界にも強く惹かれ、夢中で習い、練習を重ねました。

スタジオを始めて4年目。HIPHOP人気が広がり、「ダンスをやってみたい」という人が急増する中、ある先生から「全く動けない人がいて困っている」と相談を受けました。最初は軽く受け流していたものの、実際にその“全く動けない人”の動きを見て驚愕。リズムが取れず、手足はバラバラ。「踊りたい」という気持ちは伝わるのに、体が全くついてこない。
残念ながら、その方はすぐに辞めてしまいました。でも、それがきっかけでした。「できない人を助ける仕組みが必要だ」と。
そこから、同じような悩みを持つ人が増えていき、リズムマスターが誕生することになったのです。
しかし、せっかく「ダンスをやってみたい」という人が増えたのに、初心者の多くが「できない」と感じて離れていってしまう──この現実に、私たちも強く心を動かされました。
「何かできることはないのか?」
私を含む4人のインストラクターが集まり、試行錯誤の末に「超初心者向けレッスン」を作ることにしました。シンプルな動きで構成された内容を考えましたが、やってみると正直ダサい、つまらない、そして何より「これで上手くなる気がしない」と感じるようなものでした。
そんなトンネルのような3ヶ月。深夜まで続く議論に、ついには「もうそんな人は放っておこう」という声も出始める中、あるひと言が私たちの脳を撃ち抜きました。
「リズムだけ取り出せばいいんじゃない?」
その瞬間、全員が目を見開いたのを覚えています。振り付けの中には無数の動きがありますが、使っているリズムの種類は実は限られているのでは?──そんな発見から、私たちは振りの中にあるリズムパターンを抽出する作業に取りかかりました。
「あーでもない、こーでもない」と言いながら作業を進め、ついに最初の4つの基本パターンが完成。そして、「入門クラス」では伝わらない魅力をもっと伝えるため、レッスン名を**“リズムマスター”**に決定。
そこから気づけば20年以上。今ではリズムパターンは16に増え、時代に合わせて少しずつアップデートを続けています。
でも、あの4人で生み出した時間は、私にとって今も特別なもの。リズムマスターは、ただの基礎練習ではなく、「私が振り付けを生み出す時の土台」となり、ずっと私の中で生き続けています。
今ではダンスジュテの看板レッスンになった「リズムマスター」。今日はその誕生の夜を思い出して、書いてみました。
あのとき一緒に生み出した仲間たちに感謝しながら、次の世代にもこのリズムが届くよう、これからも磨き続けたいと思っています。
あの夜の努力、ちゃんと今も育ってる。そして、これからも。